Olive の日記

文学少女

『それでも町は廻っている』16巻の感想

 『それでも町は廻っている』16巻を読んだ。6年前にアニメを観てこの作品を読み始めた。高校生だった。当時から何の気なしに読んでいた漫画だった。しかし、16巻最後の

「ずっと…背中を追いかけて」

「どーにかここまで来ました」

で突然置いていかれたかのように感じた。私はこの6年間で大して成長していないし、夢をもったこともない。嵐山歩鳥も同じようなものだと勝手に思っていた。しかし、実際には、上記のようにしっかりと目標に向かって進んでいたようである。突然の自分との解離に喪失感を感じてしまった。

 

『結物語』の感想

 西尾維新さんの『結物語』を読んだ。

 短編四編が収録されている。表紙が白無垢姿の戦場ヶ原ひたぎが表紙だったので、大いに期待して読み始めた。予想に反して戦場ヶ原ひたぎはわずか4ページしか登場しない。

 23歳になり、警察官となった阿良々木暦くんが研修のために地元に帰ってきて、風説課で働くというようなストーリーである。警察官の中でもキャリア組という扱いらしく、本書の中でも随時突っ込みを受けている。懐かしいキャラクターも多数登場し、モンスターシリーズの前日譚として楽しめた。十年前に物語シリーズを読み始めて、阿良々木暦くんの年齢を追い越してしまったのだが、また同い年になれてうれしく思った。

『サクラ咲く』の感想

 辻村深月さんの『サクラ咲く』を読んだ。とてもとてもよかった。

 本書は 3 つの短篇により構成されている。それぞれつながりがあり、独自の物語を紡いでいく。どの物語も未来を志向していて、春らしい感じがする。初めの 2 篇は、進研ゼミ『中一講座』、『中二講座』で連載されていたようだが、そんな時期にこの物語を読めたことをとても羨ましく思った。そんな事情もあって、ドロドロ、難しいような感じではなく、爽やかな物語になっている。

 

 もしかして、あの人がタイムマシンを作ったのでしょうか?

『聖の青春』の感想

 大崎善生さんが書かれた『聖の青春』を読んだ。「ひじりの青春」ではなく「さとしの青春」である。

 一貫した、また、そうせざるを得なかった村山聖さんの人生の物語である。幼少期から亡くなるまで、将棋をあまり知らない私も夢中で読んだ。彼の周囲の人物にかんする記述も多い。

『本を読む本』の感想

   アドラーとドーレンの『本を読む本』を読んだ。大量に文章を読まなくてはならないことが増え、読書の方法について悩んでいた時にこの本に出会った。知識を得る、また、物語を楽しむことにおいて基本的な役割を担う読書であるが、その方法論について例を示して教えてくれる稀有な本である。

  「本を読む」こととその技術について述べてあり、大変参考になった。前に点検読書でこの本を読んだ際に「批評の務めを果たして、つまり判断を下してはじめて、積極的な読書は完了する」という言葉を見たことは、この読書日記を始めた一つの動機にもなっている。この本を特徴付けているのは、その技術と関連させて「文学の読みかた」を論じているところだと思う。
  

『黒猫/モルグ街の殺人』の感想

  ポーの『黒猫/モルグ街の殺人』を読んだ。訳は小川高義さん。光文社古典新訳文庫のものでした。装丁の表折り返し部分の角がとってあるのがなんだか好き。
  表題には2作品しか出ていないが、本書は8つの短編で構成されている。しかし、表題作がその中でも一際面白いと思った。「ウィリアム・ウィルソン」も良かった。各作品についての解説が本書の後ろの方にあり、読んでいて感じていたもやもやが解消され、なるほどなぁと感心した。なお、文章が難しいということではなく(むしろわかりやすい)、単に解釈の仕方でもやもやしたのである。デュパンが登場する他の短編も読んでみたい。
 私のポーデビューは小学3年生のときに姉の持っていた文学作品集にあった『黄金虫』であった。当時はとても怖いというような印象を受け、ポーは怖い小説を書く人と思っていたが、今では素晴らしい小説家だなぁと思うようになったことに妙な感慨深さを覚えた。

『上田敏全訳詩集』の感想

 山内義雄さん、矢野峰人さんが編集した『上田敏全訳詩集』を読んだ。 読むきっかけになったのは、『劇場版 ガールズ&パンツァー』である。劇中でヹルレエヌの「落葉」が引用されていた。ノルマンディー上陸作戦開始の暗号に使われたらしい。
 旧漢字や古典的な表現が多く用いられており、私と同じ世代の人は読みづらいだろう。流し読みながら、気に入った詩は辞書を引いて読んだ。良かったと感じたのは
・清々しい春を感じられるガブリエレ・ダンヌンチオの「燕の歌」
・少し悲しい秋の詩であるポオル・ヹルレエヌの「落葉」
・出会いと別れを詠んだヰルヘルム・アレントの「わすれなぐさ」
・モリス・マアテルリンクの「愁のむろ」
・ギイ・シャルル・クロオの「窓にもたれて」
・エミイル・ヹルハアレンの「不可能」
である。「愁のむろ」、「窓にもたれて」が特に好きだった。