Olive の日記

文学少女

『彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?』の感想

  森博嗣さんの『彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? 』を読み終えた。文句無しに面白かった。本作は、人工知能を主題にしたものである。同時期にプレイしていた『STEINS;GATE 0』も人工知能についての問題を扱っていたので、今後現実世界でも問題になってくるであろう人工知能について考える良い機会になったと思う。

 さて、内容は、ウォーカロンという人工細胞で作られた生命体の数が人口の半数を超えた社会において、人間の思考について研究しているハギリが何者かに狙われ、社会が直面している問題に巻き込まれていくというものである。本作は、W シリーズの 1 作目であり、他シリーズと関連があるなぁと思わされる記述もあり、シリーズ全体の壮大な枠組みが微かに見えた気がした。しかし、他シリーズを読んでいなくても全く問題はない。

 感想としては、「疑えば、どこまでも疑わしい」という作中のこの言葉がしっくりくる。新しい未知が次々と現れ、可能性が広がっていく。何が問題なのか?どうなっているのか? ということに関しては、結論が出ないままであり、どんな結末を迎えるのか、非常に興味深い。しかし、1 冊の小説として綺麗にまとまっており、読後感がとても良かった。こんなに面白い小説がシリーズであってくれて、とても嬉しく思った。本作のヒロインであるウグイさんが魅力的なヒロインであるということも付け加えておきたい。

 固有名詞云々のところで、橋場くんのことを思い出した方もいると思いますが、同作者の『喜嶋先生の静かな世界』よりも研究の雰囲気を感じられると思うので、そういうのが好きな方も是非読んでみるのが良いと思います。