Olive の日記

文学少女

『星間分子物語』の感想

 出口修至さんの『星間分子物語』を読んだ。読むきっかけとなったのは、アニメ『放課後のプレアデス』である。星間分子発見の歴史をわかりやすく書いてある。もしかすると、量子力学と分子分光学の知識があると内容の理解が深まるのかもしれない。しかし、本書から引用すると、「量子力学がどうこうというやかましいことには目をつむって」読めるようになっている。説明がとてもわかりやすいので、気軽に読めると思う。ただし、読むのに時間がかかることと 1985 年に出版された本であることを付記しておく。

 内容は、星間分子発見の歴史と若干の付随する知識についてである。

 特に面白くなかったが、興味深い部分もあった。星間分子発見の歴史と分子分光学の応用例を知ることができて有意義であったが、放課後のプレアデス』を観て漠然と抱いていた天体への憧れをどうにかしてくれるものではなかった。

『恋文の技術』の感想

 森見登美彦さんの『恋文の技術』を久しぶりに読み直した。この小説は、私が森見登美彦さんの作品の中で一番好きな小説だ。この作品は、書簡体小説という珍しい形式の小説である。本当に手紙の内容が文章の全てである。技術書ではない。

 内容は、僻地の実験所に飛ばされた大学院生が京都にいる知り合いに手紙を書きまくるというものである。作中の表現を引用するなら、「あの卒業式のあと、雨の中をずんずん船出していった伊吹さんを見送って、さしたる目的もなく、ただなんとなく大学に残ってしまった」森田一郎さんがただ手紙を書きまくるお話である。

 最後の「伊吹夏子さんへの手紙」を読んで、森田一郎さんの新しい一面を見て、大好きになった。手紙だからこそ、書き手は書く相手によって違う一面を見せるし、そこが書簡体小説の良いところだと思った。この小説の手紙は、最終的に「伊吹夏子さんへの手紙」に収斂するものだし、この手紙がやはり一番好きだ。正直に言うと、最初に読んだときは、あまり面白くないなぁと思いながら 3 回に分けて読んだ。そして最後の手紙が忘れられずに再び読み直すということを複数回行った。このように、森見登美彦さんの小説は、後々に良さがわかって大好きになるものが多いと思う。残るものがあるような、と言えば伝わるだろうか……。

『彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?』の感想

  森博嗣さんの『彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? 』を読み終えた。文句無しに面白かった。本作は、人工知能を主題にしたものである。同時期にプレイしていた『STEINS;GATE 0』も人工知能についての問題を扱っていたので、今後現実世界でも問題になってくるであろう人工知能について考える良い機会になったと思う。

 さて、内容は、ウォーカロンという人工細胞で作られた生命体の数が人口の半数を超えた社会において、人間の思考について研究しているハギリが何者かに狙われ、社会が直面している問題に巻き込まれていくというものである。本作は、W シリーズの 1 作目であり、他シリーズと関連があるなぁと思わされる記述もあり、シリーズ全体の壮大な枠組みが微かに見えた気がした。しかし、他シリーズを読んでいなくても全く問題はない。

 感想としては、「疑えば、どこまでも疑わしい」という作中のこの言葉がしっくりくる。新しい未知が次々と現れ、可能性が広がっていく。何が問題なのか?どうなっているのか? ということに関しては、結論が出ないままであり、どんな結末を迎えるのか、非常に興味深い。しかし、1 冊の小説として綺麗にまとまっており、読後感がとても良かった。こんなに面白い小説がシリーズであってくれて、とても嬉しく思った。本作のヒロインであるウグイさんが魅力的なヒロインであるということも付け加えておきたい。

 固有名詞云々のところで、橋場くんのことを思い出した方もいると思いますが、同作者の『喜嶋先生の静かな世界』よりも研究の雰囲気を感じられると思うので、そういうのが好きな方も是非読んでみるのが良いと思います。